イラン一人旅 Day 3 Tehran vol. 1

 

起床

 

起床後、ホテルで朝食をとる。

出されたパンは一昨日の朝に寄った行列のできるパン屋から調達しているらしい。

思わぬ形で遠くから眺めていたあの巨大なナンが食べられる事になった。

白胡麻が入っていて香ばしく、シンプルで飽きがこなそうな味だ。

 

卵はどうやって作るのか不思議な焼き方だった。

スクランブルエッグのようにほぐす訳でもないし、オムレツのように丸める訳でもない。

はたまた目玉焼きのように溶かずにそのまま焼くでもない。

溶いた卵を多めの油の上で薄く焼いたようなものだった。

案外採らない作り方に思える。

何故そうしないのだと言われると数秒考え込んでしまいそうだ。

 

銀行へ

 

今日はまず銀行に向かわなければならなくなった。

明日以降の旅程の為に旅行代理店で長距離バスとホテルを手配してもらったのだけど、

代金は銀行振り込みでしか受け付けていないらしいのだ。

そういう訳で最寄りの銀行に向かうべくBRTというものに乗ってみる事にした。

BRTというのは路面にあるプラットフォームの駅に発着するバスの事だ。

メトロと共通のezアクセスカードをプラットフォームの機械にかざして乗車する。

 

プラットフォーム側から見るとこんな具合になる。

必ずしもこんな風にアクリルで覆われている訳ではないけれど、とにかく車道のホームらしくできたところから乗車するようになっているのだ。

 

行きたい方角のBRTに乗車し、そろそろ違う方角へ行きたくなったところで降車した。

そこで別の方角へのBRTに乗り換えようとしたところ、なんだか気になる建物が目に入った。

 

この建物の前では物々しい様子で機関銃を持った警察が10人近く道路に向かって配備されていた。

一体何の重要施設だろうかと思ったが、間近に近づいて確認してみるとただの市立劇場である事が判った。

 

建物自体もそうだがタイルの模様も美しい。

 

天井をぐるりと囲んで並ぶひし形のラインが柱となって床に伸びていく立体的なデザインが神秘的なタイルの柄と相まって神聖な場所のように思える。

流石は芸術性の高いペルシャ文化の国だ。

 

これだけ見てしまった後はまた向かいの道路から別のBRTに乗車し、銀行の近くで降りた。

バスを降りて通りを渡ると公園があり、そこでは女性がリヤカーの荷台で赤や緑、黄色や土色といった沢山のスパイスを売っていた。

 

そこから少し歩くと目的の銀行はあった。

BANK PASAGAD

どこの銀行でもいい訳ではない。

持っているデビットカードの発行元の銀行であるBANK PASAGADのATMに来なければならなかったのだ。

 

ATMは英語表記にできるし、デビットカードのエージェントの女性がチャットでフォローしてくれたので振り込み自体は難なく済んだ。

振り込みの完了を旅行代理店にチャットで知らせる。

何でもチャットで済んで便利だ。

 

ボタンはペルシャ数字と1, 2, 3 といった普通の数字が両方表記されている。

これを書いていてふと思ったのだが、この普通の数字というのは一体何という数字と言えばいいものなのだろう。

ローマ数字はⅠ,Ⅱ, Ⅲであるし、何か他のものという事になる。

調べてみるとこれはアラビア数字であるらしい。

アラビア由来のものをこんなにも当たり前に、それも世界中で共通の文字として取り入れて生活しているとは予想外で、ちょっとした驚きを覚えた。

 

 

散策

 

振り込みも済んだ。

後は好きにすればいい。

しかし特段計画がある訳でもない。

という訳でひとまず銀行に歩いてくる道で気になったフルーツジュースの露天に立ち寄る事にした。

 

色々種類がある中、何か飲んだ事のないものを飲んでみる事にした。

気になったのは赤黒い色をしたものだったのだけど何のジュースかは分からないし、

そんな色の果物は棚には並んでいないようだった。

店頭の青年に聞いて見ると親切に翻訳アプリを使ったり、果物の写真を見せてくれたりした。

それでもそれが何であるか結局のところはよくわからなかった。

そこで小さなカップをくれてテイスティングまでさせてくれたので、その赤黒い何かのジュースを買う事に決めた。

 

このジュースはとても酸味が強く、果物というよりも割って飲むための梅干しジュースの原液を飲んでいるような味だった。

ちょっと飲む位なら何でもなかったのだけれど、ぐびぐびと飲み進めるのは難しい。

 

そこで持っていた水で2倍、3倍、と薄めていった。

4, 5倍希釈位でちょうど良い塩梅になった。

疲れた体にはこの強烈な酸味がとても心地が良い。

暑さの厳しい国では脱水症状にならないようにとこのイランの旅からは干し梅を持ち込み始めたのだけれど、

このジュースはそれに代わるものになるような気がする。

実際のところは分からないけれど、何故か塩気もあるから渇きや汗で失ったミネラルが補給されているような感覚になる。

 

その後、歩いていると歩行者用の信号機を見つけた。

どういう訳かテヘランでは(あるいはテヘランで自分の歩いた範囲では)歩行者用の信号を見かけない。

車道を走る車の間をどうにか縫うようにして無理矢理渡るという事ばかりを繰り返してきた。

あまりにも珍しいので写真を撮ってしまった。

 

 

人の姿が日本のものよりも丸みがあって柔らかく何となく漫画っぽく見える。

 

通りにはふと見るとカーペットショップがあった。

 

観光地以外の普通の店舗でどんな風に絨毯が売られているのかはあまり想像がつかなかったから新鮮だ。

ハンガーに吊るした絨毯というのもそう見るものではないから面白い。

 

こちらはヒジャブ(女性が頭に巻くスカーフ)のショップ。

 

カラフルなものも多くシャネル柄なんかも置かれているのが見える。

 

何だかんだで昼もとらずに午後三時近くになってしまった。

どこかにレストランはないかとひたすら歩いてみたのだがどこにも店がなく、唯一見かけたのはファストフード店だった。

イランを歩いていると食事をする事を忘れてしまう。

あまりレストランというものがなく、あるのはフルーツジュース屋ばかりな気がする。

基本的に店舗はファッションの店ばかりで飲食店の数が極端に少ないように思える。

そんな中、落ち着けそうな店が目に飛び込んだ。

 

2階にカフェのマークが見える。

 

一階は八百屋になっているようだった。

 

二階のカフェへ上がっていこうと思った矢先、脇に別のレストランがあるのが見えた。

 

カフェでは軽食しか提供されていない可能性もある。

だからきちんとした食事がしたいと思い、こちらに入店する事に決めた。

 

 

休憩

 

階段を降りて中に入ると、豪華絢爛と言った風の特別な空間が広がっていた。

 

ソファもカラフルで洒落ているし、壁の装飾も凝っている。

 

何だかすごいところに来てしまった。

 

金魚鉢の金魚は2匹いる内の1匹は白地にグレーという珍しい柄をしている。

もっともイランで鉢入りの金魚を見るとは思わなかった。

 

マトンを注文したのだけど一切臭みがないのには驚いた。

サフランライスと一緒に食べるのも、これぞペルシャ料理という感じがして楽しめた。

 

撮ろうかと言って店員の女性が好意で写真を撮ってくれた。

 

ゆっくり食事をしていたら四時を回ってしまい、どこの観光スポットももうすぐ閉館してしまう時間になってしまった。

本当はレストランなんかに入らずに観光を優先しようかとも思ったのだけど、今回はしっかり食事をして心身をリフレッシュさせる事の方を選んだ。

スタンプラリーに必死になったような旅にはしたくなかったし、博物館のようなところをフラフラになって見物しても仕方ないと思ったからだ。

しかしどこへも行けないのもそれはそれでつまらない。

そう思って調べていると、どうやらAzadi Towerという場所なら開いている可能性もある事が判った。

可能性もあるというのは、まず持っている旅行ガイドには17:00 閉館とあるが、ネットには17:00閉館と18:00閉館の情報が混在しているような状態だった。

まあ閉まっていたところで遠くから塔自体を眺める事位はできるだろうと思い、タクシーで向かう事にした。

 

続く