Kashanから南東に移動する事、約70km。
遂にAbyaneh(アブヤーネ)村に到着した。
(起点)Teheran > Kashan > Abyaneh
ピンク一色の家々が立ち並ぶ標高2000メートル程の高さに位置する伝統的な村で人口は300人程らしい。
村の入り口あたりで車を降り、歩き出した。
ゆるやかな坂道が続く。
この村の女性達は服装が特徴的で、薔薇柄のヒジャブを身につけて生活している。
イスラムと言われて想像する黒いヒジャブとチャドルとは対照的なカラフルな装いだ。
村の入り口あたりで早速薔薇柄ヒジャブ姿の女性を見かけた。
何だかほんわかとした姿が愛らしい。
立ち並ぶ土壁造りの家々は皆同じピンク色をしている。
これは土壌に鉄分が多く含まれている赤土を材料に使っている事によるものらしい。
村の人々は3世紀から7世紀のサーサーン朝時代に公用語として使用されていたパフラヴィー語と呼ばれるペルシャ語も使うらしい。
しかしここは道幅が狭い。
それでも通れる訳のなさそうな道をがたがたと車体を揺らして通り抜けていく車がある。
そして車が通る度に歩行者は壁に背中をぴったりつけるようにして道を譲らなければならない。
歩みを進めると小さな土産物屋があるのが見えた。
例の薔薇柄のヒジャブも売られているようだ。
経年劣化からなのか人為的になのか、倒壊した建物もあった。
そのすぐ傍らでは衣服が吊るされて並んでいる。
これも土産物屋のようだ。
奥へ進むと入り口があるようだった。
こういう店構えも街中のかっちりとしたウインドゥディスプレイとは違って趣があって良い。
また村人の女性達をみかけた。
揃いの薔薇柄ヒジャブ姿で連れ立ってゆっくりと歩く姿が微笑ましい。
道端に駐車されたタクシー。
タクシーなんて撮りたいの?!と現地女性に笑われてしまった。
乾燥した土地なのだけれど意外にも豊かな水源があるようで、通りかかった大木の幹の脇から水が吹き出しているのが見えた。
音を立てて滝の様に際限なく大量の水が流れ出ている。
少し開けた場所に出ると大きな土産物屋が見えた。
日本のアニメはこんなところにまで届いているようだった。
青いものもあってオフィシャルなものではなさそうだけれど文化が受けいられている事は喜ばしい。
店先では手作りのりんご酢が売られていた。
勧められたので少量飲ませてもらったがあまりにも酸度がきついので咽せてしまった。
原液を飲んだのだから無理も無い。
薄めて使うには何の問題もないのだろう。
結局普通のりんごと水を買って店を後にした。
かじってみると見た目通りそれ程甘くはないのだけれど、さっぱりしていて長距離移動のリフレッシュになった。
何より土地のものが食べられるのは嬉しい。
道端で売られていた小物。
店先に集まる観光客達。
どうやらドライフルーツ店のようだった。
色々な種類のものが並び、量り売りで売られている。
いちじく
オレンジ、そしてナッツ。
紅茶やハーブティーを飲むのに良さそうだ。
これはドライフルーツペーストを固めてキューブ状にしたものだろうか。
少量お茶に入れて楽しむのに良さそうだ。
アプリコット
これはデーツかもしれない。
悩んだ末、レーズンとナッツを100gずつ程購入した。
店の端にはジュースのサーバーが並んでいる。
その甘い香りに蜂たちが誘われてくる。
一通りゆっくりと1時間かけて村を見て回る事ができた。
車に戻る為、来た道を引き返す。
許されていたのは1時間だったが、時間ぎりぎりになってしまった為、石造りの道を駆け戻る事になった。
さっきの小さな滝の近くには水が豊かな為かこんなからからな場所でも青々とした木が立ち並んでいて涼しげだ。
溝のようになっているところには用水路なのか、水が流れている。
石階段
長い時間の堆積を感じさせられる。
また車だ。
車幅も人とすれ違うのも本当にぎりぎりだ。
つい写真を撮りたくなってしまう。
「なあ?すげえだろう?!Whoooo!」
陽気なドライバーが車内から無邪気に親指を立てて笑いかけてくる。
またイランという国が好きになる。
車に戻るとドライバーの女性がお茶を勧めてくれた。
揺れる社内でだいぶ膝にこぼしてもしまったけれど、暑い日に飲む熱いお茶は不思議と体に沁みて心地良い。
窓外の風景。
次の場所へと向かう。
立ち寄ってもらう観光場所は次で終わりのようだ。
到着したのはSheikh Abdolsamad Mosqueという小さなモスクだった。
入り口から中へと入っていく。
花の様なデザインの印象的な天井。
涼しげな水瓶
どちらかというと質素でシンプルなモスクだ。
中は少し荒れていて時が止まったような佇まいだ。
出入り口が他のところと比べると少し低い造りになっている気がする。
青色が神秘的で美しい。
地味な印象のモスクだったけれどこの部分が見れただけでも立ち寄って良かったと思えた。
しかしここにはもっと人目を惹く様な目に見えて美しい部分も存在した。
それはモスクの外側に回るとあった。
何とも言えないブルーとベージュを基調とした色模様と細かい彫刻のデザインが神秘的で美しい。
モスクの裏は緑地と低層の住宅、その向こうに山が見え、のどかな風景が広がっていた。
また車に戻って移動を始める。
目的地は次の街、Isfahanだ。
16世紀に首都となり、政治や文化の中心的な都市として機能し、盛んな貿易により発展を遂げ、世界中からありとあらゆるものが集まり栄華を極めた事から世界の半分とも言われた場所らしい。
Isfahanでのホテルを取ろうとしたところ、何故かブッキングサイトでの予約がことごとくできなくなっており、少し手間取った。
どのホテルのリスティングを見ても予約ボタンが無効になっており、そのホテルに連絡をして直接問い合わせるようにという案内文が表示されていた。
移動中の車内でメールでホテルに連絡を取ったところ、難なく手頃な宿をとる事はできたので安心した。
経済状況が不安定な事からイランでは低価格のホテルは外国人には宿泊させないような動きもあるらしい。
その為にサイト予約ができなくなっていたのかは判らないけれど、何はともあれ今夜からは別の街の別のホテルに泊まる事ができる。
今回は少し変わったコテージタイプの宿というものを取った。
Kashanから移動する事約200km。
街の中へと入ってくると、窓の外の風景がだいぶ変わって来た。
15:30、Isfahan到着。
ドライバーの女性に別れを告げ、ホテルにチェックインした。
これが予約したコテージ。
なかなか心地よさそうな部屋だ。
共有エリアも開放的で良い。
そろりと中庭を歩く猫
溜まっていた洗濯を済ませようと洗濯機に衣類を放り投げてドアを閉める。
洗濯が終わるのを待つ間、マグカップを借りてセルフサービスのホットコーヒーを飲みながら一息つく。
イランでは暑い中でも冷たいものよりも温かい飲み物を飲みたくなる。
体がじんわりとほぐされてリラックスできる。
ベンチに腰掛けてぼんやりとしていると中国人の青年が話しかけてきた。
偶然にもテヘランのAzadi towerで会った青年と再会する事ができた。
昨晩到着し、明日にはここIsaphanを発つらしい。
日本では渡航先としてイランを選ぶ人は少ないが、彼の話によると中国では逆にビザの問題がない事から多くの人々がイランを訪れるのだそうだ。
しばらく中庭でのんびりした後、洗濯物をコテージの窓やランプ、ドアノブ等、部屋の外側と内側のあらゆるところに無理やり引っ掛けて干し、外へと出かけた。