Azadi Towerへ
あいにく渋滞にはまってしまったが1時間近くでタワーに着く事はできた。
タクシーを降りて車道の車の間を通り抜け、どこかにあるはずのエントランスを探して必死になって息を切らし切らし駆けて行く。
タワーは周りを360度広々とした芝地に囲まれるようにして建っていた。
外観は主張の強いデザインで迫力がある。
高度な文明による他を圧倒するような気風のどことなく宇宙をイメージさせるような建物という感じがする。
表面はイランのイスファハンで採掘された大理石で覆われている。
マグニチュード7クラスの地震にも耐え得る頑丈な造りになっているらしい。
高さ45メートルのテヘランを象徴するタワー。
せっかくなので歴史的な事も少し書いておく事にする。
Azadi towerはペルシア帝国建国2500年を記念して国王の象徴として1969年に建設が始まり、1971年に完成している。
完成後7年経ってImam Khomeiniの主導したイラン革命によってそれまで独裁国家だったイランが共和国になった事で塔の名前はShahyad Tower(王の記憶)からAzadi tower(自由の塔という意味)という自由のシンボルとして改名されたようだ。
エントランスに着いて受け付けを訪ねると幸いな事にはまだタワーは営業中のようだった。
チケットを買って中へと進む。
ちょっとした展示コーナーやミュージアム、土産物屋、展望台があった。
入館したのが17:42だったから残されているのは18分足らずしかなかったが順に見て回った。
石炭の展示
イランの石油埋蔵量は世界第三位のようだ。(天然ガスは世界第二位)
日本はイランから多くの原油を輸入しており、1960年代に急上昇した輸入量の割合は1970年には輸入国全体の40%を超えていた。
オイルマネーの恩恵
なんて適役な写真なんだろうと少し笑ってしまう。
奥へと進むと薄暗い不思議な雰囲気のエリアになっていた。
1960年代のイランを再現した発電所、石油精製所、湖、Azadi tower等の模型が並んでいる。
建築段階のAadi towerの写真。
完成迄に2年半近くを要したらしい。
その位の期間で竣工できるのは随分早いようにも思える。
食器の展示
ブルーとゴールドで格式高い雰囲気がある。
近寄ってみるとAzadi towerがペイントされた新しい最近の食器で、歴史的なものではなさそうだった。
そうとしてもポットの蓋の取手や注ぎ口、ポットとカップの持ち手のデザイン等を見るとやっぱり凄い。
地下展示場
地下展示場のスペースには小さな土産物屋が2店あってどちらも大学生位の若い女性が一人で店番をしていた。
見たいものもあったけれど閉館が差し迫っているから急がないといけないと思い、店を後にしようと思ったところ、
Azadi towerの営業時間が20:00である事を教えてもらった。
6年前の旅行ガイドブックに書かれていた17:00よりも3時間も長い。
慌てる必要は全くなかった様だ。
色々なものを見せてもらった後、小鳥の置物を買う事に決めた。
荷物を増やしたくない中で何か1つ思い出にと思った中、この小鳥は箸置き程度の大きさでデザインも気に入ったのでとても良い買い物になった。
店番の女性の母親(Zeanab Mehrabi Zeinat)の作品らしい。
アーティストでヨーロッパで個展を開くこともある女性なのだそうだ。
45 toman (1ユーロちょっと位)だった。
この土産物屋では中国人の青年に出会った。
これまでテヘランではアジア人を一人も見かけなかったからとてもレアな事だった。
彼も旅行で来ているらしい。
中国ではビザの関係上、イランが渡航しやすい国の1つらしく、旅先としては人気があるそうだ。
最後に展望台へと上がって行く。
天井
展望台
展望台からの眺め。
芝地は歩道で隔てられて特徴的な形をしている。
タワーへと続く一本道と、ぐるりと周りを囲む車道のデザインも美しい。
遠くにMiliad towerが見える。
上から見下ろすと改めて建物の密集した大きな都市なんだという事が分かる。
遠くに山々が見えてどことなく神戸の街並みの様だ。
展望台を降りてタワーの中へと戻り、進路を先へと進んでいく。
イラン革命の主導者Imam Khomeini の写真と共にFreedom is Not Freeという言葉が掲げられている。
「自由はただでは引き換えられない、多くの犠牲や闘いの上に成り立つもの」とでも訳せば良いか。
短くて重い言葉だ。
ここにもピアノが置かれている。
イランでは博物館にピアノはつきものなのだろうか。
弾いているところを見てみたいものだ。
意外なものも目にした。
バーカウンターのような形式でコーヒーやお茶が提供されている。
奥の棚ではスナック、ジュース類が売られている。
イラン革命の写真の展示
これは何だろう。
いくら考えてもわかりそうにはなかった。
Azadi towerは夜にこそ美しい。
どこから見ても見入ってしまう。
夕方の顔とは全く違ったものに見える。
タワーの脚元では何かが売られているようだった。
スナックやマフィンのようなものの他にコーヒーがあったので頼む事にした。
黄色い棒はザラメを固めたようなもの。
こういうものは他国ではクリームや砂糖入りが多いけれどすっきりとしたブラックコーヒーで嬉しかった。
一杯 200,000 rls (50セント位)
Azadi towerに乾杯
とても立体的で見る方角によって色々な顔が見える。
いくら見ても見飽きない不思議な建築だ。
辺りは遮るものがなく広々としている。
こんな凄いものを前にして見物を終えたからと言ってすぐにここを離れるのは惜しい気持ちになり、タワーの見える芝地でゆっくりする事にした。
バックパックを下ろして芝に寝転びタワーを眺める。
空を眺め、遠くを眺め、またタワーを眺め、目を閉じる。
考えに耽る。
何も考えずにぼんやりする。
とにかく気が済むまでそうしていた。
気づけば1時間半程時が経っていた。
体も頭も軽くなっていた。
写真を撮って観光地を移動するだけでは意味がない。
こういう気ままな時間を過ごせた事が嬉しかった。
本当は他にも寄れる場所があったのだけどここでの時間が大切だったからやめにしてしまった。
こういう時間の楽しみ方は一人旅でしかできない贅沢だと思う。
さようならAzadi tower。
きっとテヘランに住んでいたら何度だってここへ来ていたと思う。
観光名所ではあるけれど人出がそう多い訳でもなく、大きな芝地の公園という感じでとても静かで落ち着く場所だった。
帰路
便利な事に地下鉄の駅がタワーの割と近くにあり、そのまま地下鉄に乗ってホテルに向かった。
車内で席に座っていると、手に持っていた旅行ガイド本を見た隣りの席の青年が話しかけてきた。
それは何?
日本語なの?
見せて!
日本語とペルシャ語はどちらが難しいの?
日本語には幾つのアルファベットがあるの?
これからどこへ行くの?
降りる駅もたまたま同じだった。
地下鉄を降りて共にに地上へと上がって行く。
ホテルはどこ?
道はわかる?
何か困ったことはない?
最後までとにかく優しくて親切な青年だった。
テヘランでITエンジニアをしているらしい。
駅からホテルへの帰り道の途中、いつも素通りしていたケーキ屋に入ってみた。
たっぷりホイップクリームをのせた甘そうなケーキがショーケースにずらりと並んでいる。
色々と物色した結果、量り売りのナッツを買うことにした。
ほんの少しでいいからと頼み、店員の男性も分かったと言って納得したのだけど大きな紙袋にシャベルで2、3キロ近く放り込もうとされてしまう。
慌てて静止し、どうにか300g位に落ち着けてもらった。
まあ通常はこういうものなら誰しもキロ単位で買うものなのだろう。
店内の写真を撮らせてもらっていると、これも撮りなよとサフランか何かを差し出された。
言われた通り撮ると嬉しそうににこにこと満面の笑みを返してくれる。
純真な子供のような大人達の姿が今日も不慣れな旅人の心をほころばせてくれる。
最後に親しくなったホテルスタッフの青年にとシュークリームも追加で買って店を後にした。